文 節

p h r a s e .

2 3 . d e c e m b e r  / 2 0 1 8

23.december 2018

 

 

“文節”たる時間。

 

 

この仕事を始めようと決心したのは、これまでに蒐集し続けてきた知識と衝撃の集積からで、

 

蒐集の中で、仕事とする時の鍵となる言葉が何か、を純粋に紐解く作業を、それなりに長い時間をかけて抽出し続けて参りました。

 

 

答えを出しあぐねる中、自分の中でまずは研鑽し続け、漸く突き詰めたのが”文節”という言葉でありました。

 

 

“文節”とは「文を実際の言語として不自然でない程度に区切った最小の単位」とされているよう、

 

少し解り辛い部分がありますが、それを更に細かく区切ったものが「語」であり、

 

「語と語」を不自然でない程度に区切ったものを日本語文法の中では”文節”と呼びます。

 

 

解り易く噛み砕いた例えをするのであれば、文と文の間に息を吸ってもいい”間”のことを指します。

 

世は、膨大な情報と物で溢れ返り、人々は忙しく流れる時の中で、絶え間なくそれらを受け入れて、介していかなくてはなりません。

 

働く事に疲れ、情熱を失いかけ、行き場のない希望が潰えそうだと感じていても、

 

僕たち人間は、休む事さえもままならず、絶えず動き続けなくてはならなくて、

 

いつか壊れてしまうのではないだろうか、と不安に駆られ、自分が消耗するような”苦痛”から、

 

ひたすらに逃げ出そうと背中を向け、自分を戒める事も無くそれなりに生き、

 

それでも日々は過ぎていくのだと、つまらない悟りを開き、流れ行く時勢に叛かずに従うばかりで、

 

そんな風に腐りかけていた僕を救ってくれたのが、暮らしの中にある”間”のような時間でありました。

 

 

それを得てから僕は、良くも悪くも反俗的な態度が嵩じて、この社会の中で生きるよりも、ささやかなその時間をどうしても体現し、

 

様々な人に届けたいのだ、と強く願い、それが叶えられる場所がないかと探し、今のアトリエとなる場所に辿り着き、そしてこの地へとやってきました。

 

来たての当時は、食うに困り、暮らすも困難で、立ちはだかる壁も大きく、悩みと苦境の連続で、途中でまた投げ出してしまおうかと、

 

そう思った事も何度かあり、自分一人では何一つ成し遂げれないのか、と自分の想像していた姿とは全く違う事に辟易としていましたが、

 

それでも僕を支えてくれる人がいて、なんとか続けてこれたのだと思い、只管に感謝でありました。

 

 

ほどなくして、結局僕は社会に復帰する事になります。

 

 

少しずつ生活は穏やかになり、社会的な責任も果たせれるようになると、段々と自分のするべき方向性が見えなくなってきました。

 

けれども時は平等に過ぎ、変わる環境は僕だけでは無く、アトリエを取り巻く境遇も大きな変革を迎え、アトリエとの決別を余儀なくされました。

 

事は大きいはずであるのに、随分と僕は呑気なもので、決別を余儀なくされたのにも拘らず、

 

この場所に対する情熱も感覚も、少し前とは変わってしまっているのだな、と

 

ここ最近まで気がつかないふりをしてやり過ごしていたのだと改めて自戒する出来事がありました。

 

 

 

その出来事は、非常にささやかなことではありましたが、

 

過ぎゆく時間の有限性に抗いたいと願いながらも、無駄な時間をただ流し経て行き、怠惰する。

 

何一つ己は変わっていないのだな、と幼き日と重ね合わせて思い、懺悔する、遺憾な事でありました。

 

 

 

外に生い茂る草花は、また四季を通して生まれ変わり、また違うもの、違う品種で生え揃います。

 

アトリエの路地に茂っていた種々も、今年はまた違う形で生まれ変わり、生い茂っているのです。

 

不思議なものですが、これらは常世の理を表しているかのように、時は一瞬であり、人の心の中で思い出として生き永らえるのでしょう。

 

そしてこの場所とは、もう一度も、秋を迎えることが出来ないのだと、今改めて自覚するのであります。

 

 

 

 

“文節”たる時間。

 

 

 

「文節」は僕にとっても、特別な言葉であると認識していて、いつか屋号にしたいと、心の中にそっと閉まっている銘文でもあります。

 

今はまだ、それまでに至ってはいませんが、改めて、もう一度、「文節たる時間」をお届けしたいと思っています。

 

僕が今こうやって、こう思えるのは、力強く支えてくださって頂いたからこそ、と改めて感じています。

 

 

 

僕も、新たな段階へと辿り着かなくてはなりません。

 

 

 

このアトリエでの、その時間は、もう残り半年程と、非常に短い時間でありますが、

 

少しでも僕はこの”文節”の様な景色の多くを皆様にお伝えするべく、覚悟を決めて一人と成って参りました。

 

この場所で迎える秋は、もう二度と来ないけれども、

 

その中で過ごす時間の小さな一小間一小間を、可能な限り切り取ってお伝えし、

 

少しでも皆様の暮らしの中のヒントとなってくれたら、ただそれだけで僕は嬉しく思います。

 

 

 

今、この場所と最後の大寒を迎えようとしています。

 

流れゆく時を思い、先ずは確実に歩を進めていきたいと願っています。

 

次の場所よりも、まずはこの場所で。

 

 

 

 

2019.01.14 清水昂喜

I t e m s

 

 

 

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shimizukoki is freelance designer and antique seeker based in Tokyo, Japan.

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